2022年度の共通テスト物理の傾向

共通テスト「物理」の出題内容は?

まずは、科目全体の傾向を把握しましょう。分量・問題構成、難度などを解説します。

試験時間と配点

時間 / 配点:60分 / 100点


全体の傾向

難易度は2021年度共通テストと同程度であった。2021年度と同様に計算量は少なく、思考力を要する問題が多かった。

●設問数は20問のままだったが、マーク数が28→25となったことや組合せの問題が大幅に減ったこともあり、全体的な分量は少し減少した。また、中問(A・B)に別れているものがなくなった。

●第2問では物体の運動の様子を調べる実験に関する問題が出題された。前半では仮説を基にグラフを描くこと、実験が成り立つために必要な条件を考えること、仮説が誤りといえる理由を考えること、実験から得られたグラフを別の視点から捉えて描き直すことなど、力学の知識や典型問題の定着度ではなく、論理的思考力や情報の運用力を測る問題が多く見られた。また、問5、問6は2021年度 第3問B 問5および第4問 問4と同様に、運動量保存則の理解度を問う問題であった。

●第3問では電磁誘導の実験に関する問題が出題された。グラフから必要な情報を読み取り計算をすること、台車の運動を等速直線運動とみなしてよい理由を考えること、グラフの変化と実験条件の変化の対応関係を考えることなど、第2問と同様、典型問題の定着度ではなく、論理的思考力や情報の運用力を測る問題が多く見られた

●第4問では水素原子を題材に、円運動、静電気力と万有引力の大きさの比較、水素原子のエネルギーや水素原子が放出する光の振動数に関する問題が出題された。問2、問3は共通テストとしては少し計算を要する問題だが、全体的に基本〜標準レベルの問題である。


物理の「カギとなる問題」は?

次に、物理で「カギとなる問題」を見てみましょう。共通テスト特有の問題や、合格点をとるうえで重要な問題を取り上げ、攻略ポイントを解説します。

第1問

問2の難易度が比較的高かった。レンズ側から像を見たときにスクリーンに映る像の様子はあまり問われることがないので、戸惑った人もいただろう。


第2問

問3、問4の難易度が比較的高かった。問3は文章やグラフの情報が多く、どの情報を活用するか、どのようにアプローチをすればよいかなどが分からず、戸惑った人が多かっただろう。また、問4は、運動量と時刻のグラフの傾きが力であることと、いずれの質量の場合でも台車を引く力は一定であることから、グラフの傾きがすべて等しい正の値になることを見抜けばよいが、問3と同様に、どこから手をつければよいかがわからず、混乱してしまった人もいただろう。


第3問

問3の難易度が比較的高かった。迷う選択肢が複数あるが、誤答の選択肢を外す根拠がわかりづらく難しかっただろう。特に、棒磁石をどのようにつなげば磁束が2倍になるかで迷った人が多かったと考えられる。


第4問

問3は原子分野の典型問題ではあるものの、誘導が少なく共通テストとしては計算量が多い部類だったので、比較的取り組みにくかっただろう。円運動の運動方程式を立て、全エネルギーが位置エネルギーの1/2倍になることを導くことがポイントである。計算をする際や解答を選ぶ際に、文字の取り違いや指数のミスに注意したい


 

大問別ポイント/設問形式別ポイント

次に、物理の出題内容を詳しく見ていきましょう。各問の難度や求められる知識・考え方を解説します。

第1問:小問集合  [やや易]

・小問集合は力学2問、電磁気1問、波動1問、熱力学1問の5問が出題された。問2の難易度が比較的高かった
・問2はレンズ側から見たスクリーンに映る像の様子を考えることが、少し難しかっただろう。
・問3は力のモーメントのつり合いを考える基本問題。
・問4は内部エネルギーが絶対温度に比例することからA〜Cの各点を通る等温変化のグラフを考え、等温変化のグラフが原点に近いものから順に温度が低い、すなわち内部エネルギーが小さいと考えるとよい。


第2問:台車、おもりなどを用いた物体の運動に関する実験  [標準]

・問2は実験の条件について考える問題。実験を行う際は、着目する変数以外の条件は一定にする必要がある。
・問3は仮説に対して反証をする問題。速さと力が比例するなら、力が一定であれば速さも一定であることを見抜くことがポイントである。何に着目しどのように考えればよいかが分かりづらく、戸惑った人もいただろう。
問4も問3と同様に着目すべきポイントや考え方が少し分かりづらく、難易度がやや高い。運動量と時刻のグラフにおいて傾きが力であること、いずれの質量の場合でも台車を引く力の大きさが一定であることから、グラフの傾きがすべて等しい正の値になることを見抜くことがポイントである。
・問5は小球が台車から打ち出される前後で、小球の速度の水平成分が変化しないことが分かったかどうかがポイントである。
・問6は運動量保存則やエネルギー保存則が成り立つ条件を正しく理解できているかどうかを問う問題で、理解が曖昧な人は取り組みづらかっただろう。


第3問:台車、コイル、磁石などを用いた電磁誘導の実験  [標準]

・問2は台車の運動を等速直線運動とみなしてよい理由を考える問題。コイルから受ける力が弱いのはコイルに流れる誘導電流が小さいからであり、その理由はオシロスコープの内部抵抗が大きいからである。また、「空気抵抗の影響は小さい」という言葉に引きづられて「無視できる」という選択肢を選ばないように、慎重に文章を読むことも大切である。
問3は誤答の選択肢を外す根拠がわかりづらく取り組みにくい問題であった。磁束を増やすための磁石のつなぎ方を考えることが、特に難しかっただろう。
・問4は電圧の変化が逆になったことから、巻き方を逆にしたか、電源のプラスマイナスのつなぎ方を逆にしたかのいずれかが考えられるが、コイル2、コイル3の電圧の変化がそのままであることから、前者であることがわかる。
・問5は各コイルを通過する際の台車の速さが次第に速くなることから、下のコイルほど電圧が大きくなることと、最初のコイル通過してから2番目のコイルを通過するまでの時間より、2番目のコイルを通過してから3番目のコイルを通過するまでの時間の方が短くなることを見抜くことがポイントである。


第4問:電子の円運動、万有引力と静電気力の比較、エネルギー準位、光子の振動数  [標準]

・問1、問4は基本的な問題である。
・問2は万有引力と静電気力の大きさを比較する基本的な問題。計算をするときに、オーダーだけを考えてもよいが、安易なミスをしないように気をつけたい。
・問3は水素原子のエネルギー準位に関する問題。自分で円運動の運動方程式を立て、全エネルギーが位置エネルギーの1/2倍になることを導くことがポイントである。典型問題ではあるが、誘導が少なく計算量も比較的多いので、やや難易度が高い


攻略へのアドバイス

最後に、次年度以降の共通テストに向けた攻略ポイントを確認しましょう。物理で求められる力をふまえて、必要となる対策を解説します。

知識や公式の抜け・漏れをなくし、基本問題を確実に解答できる力を身につける

共通テストは思考力が問われる問題が多いが、それ以前に考える材料となる知識や使うべき公式を正しく身につけていなければ太刀打ちできない。まずは基本問題の演習を通して、知識を定着させ、公式をすぐに使用できる状態にしておくことが最優先である。


実験を行い、図やグラフを用いて情報を整理したり、議論をしたりする機会を増やす

実験では、教科書の結果と一致することを確かめるだけではなく、誤差が生じた原因はなぜか、実験結果から新しい仮説が考えられないか、その仮説が正しいことを検証するためにはどのような実験を行えばよいか、あるいは反証するためには何を考えればよいか、などの発展的な考察もぜひ行ってほしい


様々な物理現象を言葉で説明する訓練をする

共通テストは全体的に計算量が少ないため、物理現象を言葉を用いて説明する訓練が重要である。友達どうしでわからない問題を教え合うなどして、物理現象を自分の言葉で説明をする機会を増やしてほしい。

また、教科書傍用の問題集に取り組むときも、ただ場当たり的に問題の解き方を身につけるのではなく、「どのような条件のときに運動量保存則が成立するのか」「運動の向きを変化させる原因は何か」など、物理現象の根本的な部分を意識しながら取り組んでほしい