2022年共通テスト日本史の傾向

共通テスト「日本史B」の出題内容は?

まずは、科目全体の傾向を把握しましょう。分量、問題構成、難度などを解説します。

試験時間と配点

時間 / 配点:60分 / 100点


全体の傾向

●大問数は6題、小問数は32問であり、いずれも2021年度共通テストと同数であった。


 

出題テーマ

●出題構成は、テーマ史、原始・古代、中世、近世各1題、近・現代2題で、変動はなかった。

●2021年度共通テストやセンター試験同様、近・現代からの出題が全体の3割を超えている

●また、昭和戦後史単独の設問は、2021年度共通テスト第1日程から1問増えて3問出題された。


おもな注目ポイント

●2021年度共通テストや試行調査同様、多様な資料を用いた問題が見られた。グラフを用いた出題は見られなかったが、系図や時刻表、写真などが出題された。資・史料を用いた問題が全体の半数近くを占め、2021年度共通テストに比べて、資・史料の読み取りを要する問題が増加した。

●2021年度共通テスト同様、出題された史料は、ほとんどの受験生にとって見慣れないものであった。全体で12点の史料が用いられ、2021年度共通テスト第1日程の5点から大幅に増加した。また、史料を年代順に並べ替える問題が出題された。

●正誤問題が増え、全体の6割以上を占めたほか、年代整序問題が6問出題され、2021年度共通テスト第1日程から2問増えた。一方で、2021年度共通テストや試行調査で見られた「評価と根拠」のような、複数段階の思考を求められる出題は見られなかった

●資・史料の読み取りなど手間のかかる出題が増えたものの、全体的な難易度は標準的で、2021年度共通テストと同程度であった。


日本史Bの「カギとなる問題」は?

次に、日本史で「カギとなる問題」を見てみましょう。共通テスト特有の問題や、合格点をとるうえで重要な問題を取り上げ、攻略ポイントを解説します。

第2問問4

未見史料を含む3つの史料を、年代順に並べ替える問題であった。問題文に「法整備の過程を考えて」とあるように、憲法十七条、養老令、延喜式それぞれの性質を念頭に置き、史料の内容と結びつけていくことが求められた。


 

第3問問4

未見史料の読解問題であるが、注記と合わせて史料を丁寧に読み、確実に正解したい。本問のほか、第2問問3、第4問問3・問4、第5問問2・問4も同様である。


 

第6問問5

写真X・Yに関する説明文について問われた。Xは見慣れない写真であり迷うだろうが、問題文の「戦後10年(1945〜55年)の間に撮影された」に着目できれば、解答できただろう。


 

 

 

大問別ポイント/設問形式別ポイント

次に、日本史の出題内容を詳しく見ていきましょう。各問の難度や求められる知識・考え方を解説します。

第1問:人名から見た日本の歴史  [標準]

メモや系図を織り交ぜた会話文形式の出題であった。史料は出題されていないが、大問の半数以上が会話文や図・表の読み取りを要する問題であった。

・問1の空欄アは、会話文とメモから、「北条」が苗字であることを読み取りたい。空欄イは、華族・士族・平民の身分が明治期に「撤廃」ではなく新たに設けられた点に注意したい。
・問2は、X・Yともに人物特定の決め手になる歴史用語がなく、判断に迷っただろう。
・問4のa・bは、「嵯峨天皇」から、「背景」として弘仁・貞観文化の特徴である「唐風化」を想起したい。
・問6は知識だけでなく、会話文とメモも踏まえて解答したい。


第2問:法整備と遣隋使・遣唐使  [標準]

年表が提示された。問3・問4の史料問題は苦戦した受験生も多いだろうが、その他は教科書レベルの知識で対応できる問題であった。

・問3は、古代の計帳を読み取ることが求められた。戸惑っただろうが、注記も確認しながら丁寧に史料を読み取りたい
・問4は、3つの史料を年代順に並べ替える問題であった。史料Ⅰ〜Ⅲが憲法十七条・養老令・延喜式のいずれであるかを特定する必要があるが、難しかっただろう。とくにⅠとⅢで迷う受験生が多かっただろうが、問題文の「法整備の過程を考えて」という記述を踏まえて、「令」と「式」の違いに着目したい。Ⅲは、「令条の期の後」から、律・令・格の施行細則である「式」の一文であることに気づきたい。


第3問:中世の海と人々の関わり  [標準]

会話文形式の出題であった。問3では馬借の絵図、問4では未見史料、問5では地図が出題された。出題形式は多様だが、標準的な知識で対応できる問題が多く、取り組みやすかった。

・問1は、倭寇についての知識から誤文を判断できるが、他の選択肢は会話文に正誤判断のヒントが含まれていた
・問4は、中世の日朝貿易についての史料読解が出題された。未見史料を正確に理解することが求められたが、丁寧に史料を読み、確実に正解したい。


第4問:近世の身分と社会  [標準]

高校生が作成したメモが提示された。問3・問4で、続けて史料読解問題が出題された。読解に時間を取られただろうが、丁寧な読み取りと教科書レベルの知識で対応可能な問題であった。時間配分を気にしつつ丁寧に読み込み、確実に正解したい。

・問3では未見史料が2点出題され、いずれも史料内容の要旨を押さえることが求められた。Yの「世直し一揆」は幕末期の出来事である。史料2の「天明」に注目して正誤を判断しよう。
・問4も未見史料の読解が求められた。c・dは知識から判断するが、問題文の「1836年」から「改革」が天保の改革であることを特定したい。


第5問:日本とハワイの歴史  [やや難]

会話文形式の出題であった。未見史料の読み取り問題が2問出題された上に、やや細かい知識を問う問題も出題され、他の大問に比べて難しかっただろう。

・問1では、長崎の海軍伝習所と、アメリカ人宣教師ヘボンが問われた。細かい知識で判断に迷っただろうが、消去法も使って解答したい。
・問2は、未見史料の読解と、日清修好条規に対する理解が問われた。史料内容を正確に把握することが求められた上に、日清修好条規の内容も正確に押さえている必要があった。cの琉球漂流民殺害事件が同じ1871年の出来事であり、迷う受験生も多かっただろう。
・問3は、1885年から1894年の間の3つの出来事の年代整序問題であるが、Ⅰ〜Ⅲの文には直接的な歴史用語が示されておらず、とくにⅢは「大豆など」という説明に留まっており、「防穀令事件」を想起しづらかっただろう。


第6問:鉄道の歴史  [標準]

リード文形式の出題であった。大問の半数以上に当たる、問2・問3・問5・問6が資・史料を読み取る問題であったが、標準的な知識で対応できる

・問1は、センター試験で出題されていた歴史用語のみの空欄補充問題である。基本的なものであり、確実に正解したい。
・問6は統計資料と年表を用いた読み取り問題であった。時期判定に必要な東京オリンピック開催と第1次石油危機の年代は基本的な知識であり、確実に正解したい。
・問7では、2000年代の小泉純一郎首相が出題されたが、電電公社・国鉄・専売公社の民営化を中曽根康弘内閣の出来事としてセットで押さえられていれば、解答できただろう。


攻略へのアドバイス

最後に、次年度以降の共通テストに向けた攻略ポイントを確認しましょう。日本史で求められる力をふまえて、必要となる対策を解説します。

基本的な知識を確実に押さえる

共通テストでは、資・史料読解力や思考力をはかる問題も出題されるが、多くの問題で、知識の確認や活用が求められるまずは、教科書レベルの知識を押さえていることが重要である。教科書や用語集などを活用して基本的な知識をしっかり固めよう。

また、共通テストでは、世界の国々との接触や交流という視点を意識した問題が出題されることもある。教科書でも、諸外国の出来事や日本への影響について触れられているので、見逃さないようにしたい。


資料(史料)読解力を磨く

共通テストでは、教科書などに掲載されていないような文献史料や絵図、グラフなど初見の資料を、その場で読み取り、設問に即して解答することが求められる。資・史料問題対策の第一歩は資料(史料)に慣れることである。日頃から史料集や図説を活用し、「資料(史料)を読むこと」に慣れておこう


問題演習を積む

共通テストでは、センター試験には見られなかったような、知識の活用などを求める問題が出題される。このような形式の問題は、一問一答的な学習では対応しきれない。様々な形式の問題に取り組み、実戦力を養おう。