2022年共通テスト化学の傾向

 

共通テスト「化学」の出題内容は?

まずは、科目全体の傾向を把握しましょう。分量、問題構成、難度などを解説します。

試験時間と配点

時間 / 配点:60分 / 100点


全体の傾向

●大問数は5、マーク数は4増え、実質の解答数も29と2021年度よりも増加した。2021年度に続いて、個別試験レベルの難易度の問題が出題されたり、吟味に時間を要する正誤問題が多かったりしたため、時間のやりくりに苦労するセットであった。2021年度は解答時間に対する負担感が大きかったが、2022年度はそれを上回る負担感であった。

●2021年度同様、一部に、センター試験では見られなかった出題形式の問題がみられたが、基本的にはセンター試験の形式を踏襲した出題が中心であった。

●数値を桁ごとに解答する問題が2問出題された。一方、方眼紙を用いる問題、前問連動型の問題、実験レポートを題材とした問題は、出題されなかった。


化学の「カギとなる問題」は?

次に、化学で「カギとなる問題」を見てみましょう。共通テスト特有の問題や、合格点をとるうえで重要な問題を取り上げ、攻略ポイントを解説します。

第1問 問5b

圧力の変化による気体の溶解量の変化が問われた。何を求めればよいかは理解できても、溶媒の体積、気体の分圧、溶解度の単位・測定条件など、たくさんの要素をもれなく盛り込んで考えねばならないため思考過程は煩雑であった。正答率は低かっただろう。


第4問 問4c

センター試験では見慣れない問題だが、すべて書き出し、地道に数え上げていけば解答できる。落ち着いて対応したい。


 

大問別ポイント/設問形式別ポイント

次に、化学基礎の出題内容を詳しく見ていきましょう。各問の難度や求められる知識・考え方を解説します。

第1問:理論  [標準]

・問1、問2は化学基礎範囲からの出題であり、平易であった。
・問3はグラフ選択問題であった。単調減少のグラフになることは理解できても、それが直線になるのか曲線になるのかは、演習を重ねていないと判断に迷う
・問4は非晶質に関する出題であり、対策が手薄だった受験生が多かったのではないだろうか
・問5は、気体の溶解度に関する問題であった。グラフの読み取りを必要とするが、溶解度が物質量で与えられているので、aは平易である。bも典型問題ではあるが、一般に溶解度の問題は解答に至るプロセスが複雑であり、また本問では数値計算を必要とするため、時間を要したと考えられる。


第2問:理論  [標準]

・問1は熱化学に関する問題であった。典型的な問い方ではないため一瞬面食らうかもしれないが、一つずつ落ち着いて選択肢を検討していけば正解できると考えられる。
・問2は電離平衡の問題である。溶液の混合により、実質は酢酸水溶液の水素イオン濃度を求めればよいことと、濃度が原液の半分になる点がポイントである。後者については過去のセンター試験(2019年度 第2問 問3など)で出題例があり、演習量の差が得点差につながったと考えられる。
・問3は反応速度と化学平衡がからむ問題であるが、見た目ほど難度は高くなく、ひるまずに対処したい。
・問4は水素吸蔵合金や燃料電池に関する問題である。多少の数値計算は必要であるが、いずれも易しめであり、確実に得点したいところである。


第3問:無機  [やや易]

・問1は、試薬の識別に関する問題である。いずれも各物質(イオン)の基本的な性質が押さえられていれば正解できる。
・問2は、グラフを読み取った上で、組成式を決定する過程を考える問題であった。それほど難度は高くないが、化学反応式をきちんと立てて考えないと足元をすくわれる可能性がある。
・問3はアンモニアソーダ法に関する問題である。いずれも基本的な内容を問うており、ここで得点を重ねたい。


第4問:有機  [やや難]

・問1は、ハロゲン原子を含む有機化合物に関する正誤判断問題である。細かい知識に言及した選択肢もあるが、正解は選びやすい。
・問2は、フェノールのニトロ化の過程で生成する化合物に関する問題である。問題文をきちんと読み込めば正解は可能である。
・問3は、高分子化合物に関する問題である。広範な知識が必要な分野であるが、本問の正解は選びやすくつくられている
・問4は、ジカルボン酸の還元を題材とした、グラフ読み取り、構造推定、異性体など、多岐にわたる問題である。cは還元生成物を一つ一つ書き出す必要があり、やや手間がかかる問題である。


第5問:理論、有機  [やや難]

・問1は脂肪族化合物に関する正誤判断問題で、平易である。
・問2はアルケンのオゾン分解を題材とした問題で、a〜d 4つの設問があるが、それぞれは独立している。aは、オゾン分解としては典型的な内容であるほか、リード文も付されているので正解できるだろう。bは熱化学の問題であり、高度な思考力を必要とする。c、dはいずれも反応速度について問うており、数値を桁ごとに解答する形式であった。dは、実験2におけるアルケンAとオゾンの濃度が、いずれも実験1、3のそれと異なる値であり、戸惑った受験生もいたかもしれない。


攻略へのアドバイス

最後に、次年度以降の共通テストに向けた攻略ポイントを確認しましょう。化学基礎で求められる力をふまえて、必要となる対策を解説します。

幅広い分野の正確な知識が必要

2年目となる共通テスト化学では、昨年度の形式を踏襲した小問集合形式が中心の出題となった。大問・中問形式の場合、おのずと出題分野が絞られてくるため、全分野にわたる幅広い内容を問いにくく、いわゆる「ヤマが当たる」という現象を回避しづらいという難点がある。引き続き、全範囲を抜けもれなく学習することが肝要である。


個別試験を想定した演習を

形式面では2020年度以前のセンター試験に近い一方、問題のレベルはセンター試験より高く、個別試験レベルの問題が見られる。共通テストの直前であっても、個別試験レベルを想定した演習を積んでおくことが望ましい。

また、分量がセンター試験に比べてそれほど減っていないにも関わらず、処理に時間がかかる問題が多く、時間面ではセンター試験よりかなり厳しくなっている。このため、個別試験と同様に、時間がかかりそうな問題は後回しにし、確実に解けそうな問題の見直しを重点的に行って取りこぼしを防ぐなど、個別試験で必要な戦術を身につけておく必要もあるだろう。


共通テスト独自の出題形式にも注意

小問集合が出題の中心ではあるが、数値を桁ごとに解答する問題など、共通テストで新たに導入された出題形式も見られる。また、昨年度の第1日程では方眼紙を用いる問題が出題されたほか、今年度もグラフを扱う問題が4問あり、センター試験時代も含めて近年増加傾向にある。これは「観察、実験などを行い、科学的に探究する力を養う」という学習指導要領の目標を意識した現れの一つと考えられる。

今後、実験レポートを題材とした問題など、より学習のプロセスを意識した出題が行われる可能性もあるので、もし出題されても面食らわないように、共通テスト試行調査の問題にも目を通し、必要に応じて模試型問題などで対策をしておくとよいだろう。