2022年共通テスト世界史の傾向

共通テスト「世界史B」の出題内容は?

まずは、科目全体の傾向を把握しましょう。分量、問題構成、難度などを解説します。

試験時間と配点

時間 / 配点:60分 / 100点


おもな注目ポイント

●大問数は5題で、小問数は34問であった。大問数・小問数ともに2021年度共通テスト・平成30年度試行調査と同数であった。

●会話文や資料が多用され、ほとんどの問題で、解答するためには知識だけでなく文献資料・統計資料や問題文の適切な読解が必要とされた。

●歴史研究・議論の根拠を推測させる問題や、出来事の要因を推測させる問題など、知識だけでなく思考力が必要とされる問題が出題された。

●試行調査や2021年度共通テストに引き続き、文献・地図・統計資料などの資料が多用された。2021年度共通テストと比べると、文献を用いた問題は減少したものの、地図を用いた問題が増加した。

●単語や文の組合せを問う問題が多く出題された一方で、年代整序問題の出題はなかった。

●地域は、東アジアを中心にアジアからの出題が多く、オセアニアからの出題も数問見られた。

●時代は、古代史からの出題が少なく、近・現代史からの出題が多かった。また、文献資料や地図も近・現代のものが多く使用された。

●出題分野としては、政治史からの出題が多かったが、文化史や社会・経済史などからも出題された。

全体的な難易度としては、2021年度共通テストから大きな変動はなかった


世界史Bの「カギとなる問題」は?

次に、世界史で「カギとなる問題」を見てみましょう。共通テスト特有の問題や、合格点をとるうえで重要な問題を取り上げ、攻略ポイントを解説します。

第1問問9

歴史研究において、対象の民族・集団とは別の民族・集団が残した記録を史料とする事例として適当なものを答える問題であった。歴史研究という視点が盛り込まれた共通テストらしい出題といえる。


第2問問4

合衆国大統領の演説を資料文として、そこで述べられている交渉相手国名と、締結した条約について答える問題であった。資料文から、どの条約について述べられているのかを特定する必要があり、読解力が求められるとともに、条約の内容についても正確な理解が必要とされた


第3問問4

世界の人口の推移に関する表を参照して、説明できる事項として適当なものを答える問題であった。各選択肢で述べられている歴史事項に誤りがないかを判断した上で、表の数値を正確に読み取る必要があり、知識とともに資料読解力が必要とされた


第4問問3

歴史上の出来事について議論する際の異なる2つの見方について、それぞれの見方の根拠として適当な事項を答える問題であった。まず、対象となる概念を正確に理解し、さらに根拠として挙げられている事項が歴史事項として正しいかを判断した上で、各事項が異なる2つの見方それぞれの根拠となりうるのか考察するという、段階を踏んだ思考が必要とされた。また、歴史の見方の根拠という、教科書とは異なる切り口から歴史事項を捉え直す必要があり、正確な知識に加えて歴史的考察力が求められた


第4問問6

ある出来事の要因として推測される仮説を答える問題であった。当時のソ連の国内情勢や国際関係を想起しながら、その出来事がどのような意図を持って行われたのかを推測したい。


 

 

大問別ポイント/設問形式別ポイント

次に、世界史の出題内容を詳しく見ていきましょう。各問の難度や求められる知識・考え方を解説します。

第1問:世界史上の学者や知識人 [やや易]

Aではシーボルトの逸話に関する文章と挿絵、Bではハサン=ブン=イーサーという人物の伝記記事の概略、Cでは王国維の論文の一部を用いて出題された。

・前近代からの出題が中心であった。
・問4・問7では、空欄に入る語句を資料から正しく読み取る必要があった。
・問9では、歴史研究とそれに必要な史料について問われた。問題文で示されている研究視点を理解した上で、各選択肢の事例がその視点に当てはまっているかを判断したい。


第2問:歴史上の出来事の当事者の発言や観察者の記録 [標準]

Aではウィンストン=チャーチルの『偉大な同時代人たち』の一部、Bでは冷戦期の合衆国大統領の演説を用いて出題された。

・全問が近・現代史からの出題であり、戦後史からの出題も見られた。
・問1は、資料から読み取れる情報から空欄に関連する事項を推測した上で、空欄に該当する国名を選択する必要があり、知識だけでなく読解力も必要とされた。
・問3は、空欄に入る語句を文章から読み取った上で、各選択肢の正誤を判断する必要があった。
・問4は、ある条約について、交渉相手国と条約の内容について問う問題であった。演説が何の条約について言及したものであるかを読み取れるかが肝であり、読解力とともに正確な知識が求められた


第3問:世界史上の人々の交流や社会の変化 [標準]

Aでは明治期の政治小説に描かれた国際情勢に関する授業を舞台とした会話文、Bでは世界の人口の推移に関する授業を舞台とした表と会話文、Cではオセアニアの先住民に関する授業を舞台とした会話文を用いて出題された。

・問1・問2では、空欄に入る語句を会話文から読み取り、解答を導き出す必要があった。
・問4では、表の読み取りが求められた。読み取り自体は難しくないため、各選択肢について、歴史的に正しいか、表から読み取れる情報と一致しているかを、落ち着いて確認したい。
・問6・問7・問8はいずれもオセアニアに関する出題であった。学習が手薄になりやすい地域だが、いずれも標準的な知識が身についていれば難しくない。


第4問:歴史評価の多様性 [やや難]

Aではジョージ=オーウェルの著作の一部、Bではロシアの君主に関する絵画と会話文を用いて出題された。

・問1は、文献資料から問われている時期を読み取る必要があった。同じ時期に他の地域ではどのような出来事が起こっていたのかという、同時代史的な視点を意識したい
・問3は、歴史上の出来事に対する異なる2つの見方の、それぞれの根拠と考えられる事項を判断する問題だった。また、問6は、ある出来事の要因として推測される仮説を答える問題であった。いずれの問題でも、正確な知識はもちろんのこと、事項の意義や背景、関連性を推測する歴史的考察力が必要とされた


第5問:世界史上の墓や廟 [標準]

Aではフランス王家の墓所に関する文章と図、Bで関帝廟に関する授業を舞台とした写真と会話文を用いて出題された。

・問2は、図中の空欄に当てはまる人物の名を答える問題であった。文章中の情報を正確に読み取り、手持ちの知識と照らし合わせて解答を導き出したい。
・問5の地図問題では、会話文から空欄に当てはまる地域を判断した上で、地図上でその地域の位置を選ぶ必要があった。世界史を学習する上で、地名や領域は必ず地図上でその位置を確認しておきたい
・問6では、中国の社会・経済史について出題された。社会・経済史は政治史に比べ学習が手薄になりがちだが、教科書レベルの知識はしっかりと身につけておくことが求められる


攻略へのアドバイス

最後に、次年度以降の共通テストに向けた攻略ポイントを確認しましょう。世界史で求められる力をふまえて、必要となる対策を解説します。

教科書の全範囲にわたる盤石な知識を身につける

2022年度の共通テスト世界史は、形式は新しい問題が出題されたが、細かい内容を問われる問題は出題されず、必要とされた知識は従来のセンター試験と同じく教科書レベルの標準的なものであった。また、共通テストは様々な時代や地域から幅広く出題されるため、教科書内容の抜けのない知識を身につけておく必要がある。教科書を読むほかにも、一問一答形式の用語問題集を活用するなど、演習的な学習を行いたい


様々な資料の読解に慣れておく

共通テストでは、文献や地図・統計資料といった様々な資料が提示された。提示された資料の多くは、教科書では扱われないような初見の資料であり、資料の読解に必要以上に時間を取られてしまった受験生も多かったであろう。初見の資料が提示されても落ち着いて読解のポイントを探し出せるように、日々の学習のうちから教科書や資料集などで資料を確認して、資料読解に慣れることを心掛けたい。

また、出題される資料の中には空欄を施された文献資料も含まれる。文献資料を吟味して、流れやつながりを読み取り、空欄に入る語句を検討する必要がある。文献資料に数多く当たることで、文章読解力、思考力を磨いていきたい。


歴史事項の背景や影響といった因果関係を意識する

共通テストでは、従来のセンター試験でよく出題された知識を問う単純な形式の出題は大幅に減少し、歴史事項の背景や影響といった因果関係のほか、事項の推移を考えさせる問題が多く出題された。用語のみの表面的な知識だけでなく、教科書の文章を隅々までしっかりと読み込むことで、用語同士のつながりや因果関係も確実に理解しておきたい