2022年度の共通テストの傾向

共通テスト「数学Ⅰ・A 」の出題内容は?

まずは、科目全体の傾向を把握しましょう。分量、問題構成、難度などを解説します。

試験時間と配点

時間 / 配点:70分 / 100点


全体の傾向

◆大問5題構成であり、第1問と第2問は必答問題、第3問~第5問についてはこれら3題から2題を選択する選択問題である。

◆単なる数値を求める問題だけでなく、

  • 正しい(あるいは誤っている)選択肢を選ぶ問題
  • 具体的な実社会での設定がなされ、それに対して数学を適用し、解釈をしていく問題
  • 複数の登場人物が会話をしており、その人物の考えを踏まえて解答していく問題

など、2021年度同様に、共通テストらしい出題が目立つ。


2021年度との比較

●大問構成と、各分野の出題バランスは2021年度の共通テストや、試行調査やセンター試験とほぼ同じである。

●出題方針は試行調査を踏襲しているが、共通テスト初年度の2021年度より、本来の共通テストの主旨に近い出題を意識しているように感じられる

●2021年度に比べて、必答問題(第1問、第2問)の難易度が高くなっており、全体的に難しくなっていると考えてよいだろう。2021年度は必ず得点しなければならない設問がある中問が多かったが、2022年度はこのような設問が減り、加えてヒントとなるような記述が少なくなったことが要因と考えられる。

●第1問について、2021年度は中問2題構成であったが、2022年度は中問3題構成となった。


数学Ⅰ・A の「カギとなる問題」は?

次に、数学Ⅰ・A で「カギとなる問題」を見てみましょう。共通テスト特有の問題や、合格点をとるうえで重要な問題を取り上げ、攻略ポイントを解説します。

各大問、および中問での最後の問題はやや難易度が高く設定されており、高得点をねらうためには、これらのうちどのくらいを処理できるかがカギとなってくる。

●共通テストの特徴が強く現れている問題は、必答問題では第1問〔2〕第2問〔1〕であり、選択問題のすべてである。これらの問題の対策は日ごろからの数学の学習の仕方にもかかわってくるので、できるだけ早い段階で、これらの問題の経験をし、数学の問題演習に対する姿勢を見直しておきたい

大問別ポイント/設問形式別ポイント

次に、数学Ⅰ・Aの出題内容を詳しく見ていきましょう。各問の難度や求められる知識・考え方を解説します。

第1問〔1〕:数と式、対称式 [標準]

・対称式に関する出題であり、(1)が3つの文字、(2)が2つの文字についての問題である。まずは序盤戦として、本中問は確実に得点し、勢いに乗りたいところである。
・(1)は基本問題であるが、(2)は設問の意味(対称式を誘導していること)に気づくことがポイント。文字が多いため、やや気づきにくいかもしれない。


第1問〔2〕:図形と計量 [標準]

・ガイドブックや地図アプリの情報と、三角比(数学)の知識を組み合わせて、実際の「見上げる角度」について考察していく問題。資料、会話文、選択肢、四捨五入して値を求めることなど、共通テストの特徴が凝縮された問題である。
・数学としては決して難しくないが、正しく設定を読み取り、他者の考えを参考にしながら、資料をフル活用して、目標を得るための方針を考えるところが難しい。
共通テストの対策がきちんとできていたかどうかで差がついたと思われる。


第1問〔3〕:図形と計量 [標準]

・平面図形を題材にした三角比の問題であり、後半では2次関数と融合される。内容としては標準的であり、これらの内容がきちんと身についているか、適材適所で活用できるかが試される。
・(2)の冒頭、ABのとり得る長さの範囲を求めるところで、迷った受験生もいたかもしれない。


第2問〔1〕:2次方程式、2次関数 [やや難]

・2つの2次方程式のいずれかまたは両方をみたす実数の個数の考察を太郎さんと花子さんの考えにしたがって考察していく問題。共通解の処理や2次関数のグラフ、必要条件・十分条件など分野横断の色も強く、実力差が得点に現れやすい問題である。
・本問も、共通テストの特徴が色濃く現れており、パターン暗記を中心に学習を積み重ねてきた受験生には難しく感じたであろう。


第2問〔2〕:データの分析 [標準]

・「海外日本語教育機関調査」を題材としたデータ分析の問題である。
・いくつかの資料から情報を読み取り分析していくことが要求されており、実社会に数学を適用する力を試すという共通テストの特徴がストレートに現れている
・読解量が多いが、内容は比較的取り組みやすく、本問は確実に得点しておきたい問題であろう。


第3問:場合の数と確率 [やや難]

・複数人がそれぞれプレゼントを1つずつ持ち寄って交換するとき、どの人も自分の持ってきたプレゼントにならないような交換となる事象を題材とした確率の問題である。
・(1)では丁寧な誘導がついているので、まずはしっかり得点しておこう。(2)以降では、前問の考え方を振り返ることが大切である。人数が増えた場合にどのように考えていけばよいか、試験場で臨機応変に対応する力が問われる。


第4問:整数の性質 [やや難]

・1次不定方程式を題材にした問題である。ただし、1次不定方程式を解くとき、まず具体的な1組の整数解をユークリッドの互除法などで求めることが多いが、本問は割り算による余りを利用した方法を誘導しており、経験済みの受験生は少なかったと思われる。
・本問では、(3)以降において、誘導の意味や振り返りができないと処理が難しく、出来が分かれたであろう。


第5問:図形の性質 [やや難]

・平面上の三角形を題材にした図形問題であり、メネラウスの定理が主役といえそうである。
・「△ABCの形状に関係なく」や「点Fの位置に関係なく」といった本来意識しなければならないところを丁寧に見ると難しいが、答えのみが要求されるテストであることを踏まえて、ある程度、割り切って処理できれば、だいぶ処理しやすくなる。このあたりの判断によっても差がついたかもしれない。


攻略へのアドバイス

最後に、次年度以降の共通テストに向けた攻略ポイントを確認しましょう。数学Ⅰ・Aで求められる力をふまえて、必要となる対策を解説します。

教科書の知識をしっかりと身につける

知識を発展させたり、深堀させる出題、多様な知識を問う出題と様々なバリエーションがみられる。どの知識を問われるかは出題されるまでわからないので、教科書に載っている知識はすべて扱えるようにしておこう。


探求心を大切にする

2022年度の「共通テスト」でも至るところで見受けられたが、一度考えた内容を「振り返る」ことが大切である。これは普段の学習において、問題が解けることだけが大切なのではなく、たとえば、平面から空間(2次元から3次元)への拡張、発展的な知識の類推など、ある知識を得て「何かに発展できないだろうか」という探求心を日ごろからもつことを「共通テスト」が要求していることの現れである。


「自分を信じる力」を本番で維持できるかが最も大切

「自分を信じる力」を本番で維持できるか、一番大事なのはそこである。そのために、良質な演習の積み重ねが大事。早い時期から、さまざまなレベル・ジャンルの問題に触れて、万全の対策を進めておこう

共通テスト「数学Ⅱ・B」の出題内容は?

まずは、科目全体の傾向を把握しましょう。分量、問題構成、難度などを解説します。

試験時間と配点

時間 / 配点:60分 / 100点


出題内容

◆例年通り大問5題。第1問、第2問は必答問題で、第3問~第5問のうち2題を選択。 ◆2021年度と同様に、選択問題は第3問確率分布、第4問数列、第5問ベクトルの順であった。


2021年度との比較

●第1問〔2〕や第4問など、2021年度に比べて解決過程の振り返りと一般化、数学モデル化を意識した出題が増えている。その一方で、2021年度と同様に知識を問う出題も一定数あり、大問、中問単位で、新傾向の問題、従来型に近い問題のすみ分けが行われているようにも感じられる。

●2021年度と同様に選択問題のうち第3問の確率分布は比較的解きやすい(意図的なのかもしれない)。2021年度は数列+確率分布の選択が有利だったが、2022年度はベクトル+確率分布が解きやすい。

●試行調査や2021年度と同様に、第2問はグラフの様子や方程式の解(グラフの共有点)に関するテーマが出題された。計算力重視のセンター試験からの大きな変化の1つであり、この分野に関しては、今後もこの傾向が続きやすいだろう。

●どの選択問題を解くかにもよるが、全体の分量としては2021年度とほぼ同様だろう。ベクトルと数列で2021年度の難易度は入れ替わったが、第1問〔2〕(3)、(4)の考察で手間がかかる分、少しだけ難易度としては上がっただろう。しかし、2021年度と同様に、配点の妙で得点調整される可能性が高く、平均点としては昨年並みか、若干低めくらいだろう


数学Ⅱ・Bの「カギとなる問題」は?

次に、数学Ⅱ・Bで「カギとなる問題」を見てみましょう。共通テスト特有の問題や、合格点をとるうえで重要な問題を取り上げ、攻略ポイントを解説します。

第1問〔2〕の(3)、(4)一般化と応用という共通テストらしい出題の1つで、難易度は高め。

第4問の冒頭の設定の理解、数式モデル化も共通テストらしい出題で、ここで時間を費やした人も少なくないだろう。


 

大問別ポイント/設問形式別ポイント

次に、数学Ⅱ・Bの出題内容を詳しく見ていきましょう。各問の難度や求められる知識・考え方を解説します。

第1問〔1〕:円と直線 [標準]
・円と直線に関する問題。(2)で太郎さんと花子さんの2つの方針が提示されるが、それを用いた振り返りはない。太郎さんの方針の2次方程式の計算結果は提示されており、計算力重視からの脱却の意図がうかがえる


第1問〔2〕:対数関数 [やや難]
・対数の大小関係に関する問題で、具体→一般化→その結果を振り返っての応用という、共通テストらしい出題。(3)一般化、(4)応用と難易度が順次上がり、少し難しいだろう。


第2問〔1〕:微分法 [標準]
・3次関数のグラフと共有点に関する問題。計算量は多くなく、方程式とグラフの関連を問う共通テストでは頻出の出題


第2問〔2〕:積分法 [標準]
・3次関数のグラフと面積に関する問題で、グラフの上下関係や定積分の計算を見るもの。センター型に近い出題


第3問:確率分布 [標準]
・二項分布・正規分布、連続確率変数を扱う問題で、センター試験の頃も含めて頻出問題。きちんと勉強していれば第4問の数列よりも解きやすい。


第4問:数列 [やや難]

文章や図表で与えられた条件を数式化し、問題解決を行う共通テストらしい出題。設定が若干複雑なので、設定を理解するところで時間をとられるだろう。設定を理解できれば難しくないが…。


第5問:ベクトル [標準]
・平面ベクトルの問題で、分点と内積に関する知識が問われる、どちらかといえばセンター形式に近い問題。(3)は太郎さんと花子さんの会話からヒントをつかめれば難しくないが、何も考えずに計算すると少し大変である。


攻略へのアドバイス

最後に、次年度以降の共通テストに向けた攻略ポイントを確認しましょう。数学Ⅱ・Bで求められる力をふまえて、必要となる対策を解説します。

教科書の知識をしっかりと身につける

知識を発展させたり、深堀させる出題、多様な知識を問う出題と様々なバリエーションがみられる。どの知識を問われるかは出題されるまでわからないので、教科書に載っている知識はすべて扱えるようにしておこう。


探求心を大切にする

問題が解けることだけが大切なのではなく、平面から空間(2次元から3次元)への拡張、発展的な知識の類推など、ある知識を得て「何かに発展できないだろうか」という探求心を日ごろからもって学習しよう。

また、「なぜそうなるのか」という疑問は、批判的思考を育成するには重要な意識である。このことは論理的思考の養成にもつながる。このような意識をもって、日頃の問題演習に取り組もう。


「自分を信じる力」を本番で維持できるかが最も大切

「自分を信じる力」を本番で維持できるか、一番大事なのはそこである。そのために、良質な演習の積み重ねが大事。早い時期から、さまざまなレベル・ジャンルの問題に触れて、万全の対策を進めておこう