2022年共通テスト国語の傾向

共通テスト「国語」の出題内容は?

まずは、科目全体の傾向を把握しましょう。分量、問題構成、難度などを解説します。

試験時間と配点

時間 / 配点:80分 / 200点


全体の傾向

評論・小説・古文・漢文の全四題の出題という形式は例年と同様。

第一回の共通テストと同様、図表やグラフなど文章以外の資料や、実用文の読解などの出題は見られず、一昨年度までのセンター試験の形式を踏襲した出題も多かったが、ノートや授業の会話場面を想定した出題など、情報を整理・統合する力を問われる出題も見られた

問題文の広い範囲に目配りし、各選択肢を丁寧に吟味する力が問われ、試行調査および昨年度の出題と比較すると、難易度・負担感はやや大きい出題であった。試行調査で重視されていた情報を整理し的確に把握する力は各大問中でさまざまな形式で問われており、共通テスト形式の演習経験を積んでいた受験生であれば、実力を発揮できただろう。  


国語の「カギとなる問題」は?

次に、国語で「カギとなる問題」を見てみましょう。共通テスト特有の問題や、合格点をとるうえで重要な問題を取り上げ、攻略ポイントを解説します。

第1問:問6

第1問の問6では、2つの問題文の内容を生徒が整理した【メモ】を通じて、それぞれの主題に関連する内容が問われた。(ⅰ)では【文章Ⅰ】の主題を端的に述べた選択肢を、(ii)では【文章Ⅰ】【文章Ⅱ】の両方の主題と照らし合わせたときに矛盾や飛躍のない選択肢を選ぶことがポイント。目新しい形式の出題であっても、本文中の根拠となる箇所に正しく着目したうえで、誤りを含む選択肢を消去して正解を吟味することが変わらず重要である。


 

第2問:問5

第2問の問5では、問題文で登場した「案山子」を取り上げ、歳時記の俳句と絡めて整理した【ノート】が提示された。形式面・俳句の提示などに驚いたかもしれないが、設問内容としては難しくない。(ⅰ)を確実に得点できるかどうか、(ii)の紛らわしい選択肢に惑わされないように表現の細部まで丁寧に吟味できたかどうかで差がつくだろう。


 

第3問:問4

第3問の問4は、文章を読み比べての会話文という試行調査で見られた形式での出題で枝問3つと負担が重いが、選択肢の内容を踏まえ、問題文を丁寧に読解すれば正解は導ける。リード文・注から登場人物の人物関係を押さえ、省略されている主語を補って読解する演習を積んでいるかどうかで差がつくだろう。


 

第4問

第4問(漢文)では七言律詩とその序文から出題され、漢詩の出題は旧センター試験も含め三年連続となった。語句や句形、押韻といった知識事項を問う設問が多かったため、知識事項をきちんと押さえたうえで問7の心情把握問題の選択肢を丁寧に吟味できたかで差をつけることができるだろう。


 

 

 

大問別ポイント/設問形式別ポイント

次に、国語の出題内容を詳しく見ていきましょう。各問の難度や求められる知識・考え方を解説します。

第1問:現代文(評論)檜垣立哉『食べることの哲学』、藤原辰史『食べるとはどういうことか』 [標準]

「食べる」という共通のテーマについて論じた二つの文章からの出題。どちらも平易な文章で内容把握はしやすい反面、各設問の選択肢の細かな表現吟味が難しく解きづらさがあった

・問1の漢字問題は、従来通りの(i)傍線部に相当する漢字を含む選択肢を選ぶ問題3問に加えて、(ii)傍線部とは異なる意味で漢字が用いられている選択肢を選ぶ問題2問が出題された。なお、(i)・(ii)を通していずれも4つの選択肢から正解を1つ選ぶ形式であった。
・問2~4は部分読解に関する設問。いずれも紛らわしい選択肢を吟味して正解を選ぶのに力を要する。問5では【文章Ⅱ】全体を通した表現の特徴に関する内容が問われた。
・問6では、2つの問題文の内容を生徒が整理した【メモ】を通じて、それぞれの主題に関連する内容が問われた。(i)では【文章Ⅰ】の主題を端的に述べた選択肢を、(ii)では【文章Ⅰ】【文章Ⅱ】の両方の主題と照らし合わせたときに矛盾や飛躍のない選択肢を選ぶことがポイント。目新しい形式の出題であっても、本文中の根拠となる箇所に正しく着目したうえで、誤りを含む選択肢を消去して正解を吟味することが変わらず重要である。


第2問:現代文(小説)黒井千次「庭の男」 [標準]

隣の家の立看板を見て思い悩む主人公の姿が描かれた作品。読みやすくはあるものの、特に傍線部の主人公の気持ち・行動の裏にある思いを完全に推し量るのは難しかったかもしれない。

・問1では、小説頻出の語句の意味を問う出題がなかった。また、設問数は昨年の6問→5問に、全体のマーク数も1問減となっているが、語句問題の代わりに長文の選択肢問題が出題されているため、全体的な負担感の減少はない。
・問1から問4については、例年どおり心情にかかわる問題。どの設問も選択肢の分量が多く、また、二択までの絞り込みは容易であるものの、正答を導くには細部の表現にまでかなり気を配る必要があったことから、時間内にどれだけ冷静に選択肢を吟味できたかどうかで差がつくだろう。
・問5では、問題文で登場した「案山子」を取り上げ、歳時記の俳句と絡めて整理した【ノート】が提示された。形式面・俳句の提示に驚いたかもしれないが、設問内容としては難しくない。(i)では確実に得点し、(ii)は選択肢の小さな傷を見逃さずに正答を導きたい。


第3問:古文『増鏡』、『とはずがたり』 [やや難]

歴史物語および日記を組み合わせての出題。リード文・注の情報を参照して場面状況を整理したうえで省略された主語を補って読解する必要があり、問題文読解の難度は高い。設問も問題文の細部まで正確に理解することが求められるもので、負担の重い出題だった。

・問1の語句解釈問題はいずれも頻出の重要語を問うもので、ここでの失点は避けたい。
・問2・問3の傍線部内容把握問題も重要語の理解がカギとなるが、細部まで丁寧に読解する必要がある。
・問4は文章を読み比べる教師と生徒の会話文形式の出題。問われている内容は各文章の内容読解であり、正確に場面展開・登場人物の言動を読み取れるかが問われる


第4問:阮元『揅経室集』 [やや易]

清の学者・政治家阮元の庭園について詠じた詩とその序文からの出題。漢詩の出題は2020年度のセンター試験も含め、3年連続となった。

・問1はいずれも基本的な字義解釈の問題のため、漢字そのものの持つ意味と文脈を照らし合わせて解釈していけばよい。
・問3・5は基本的な句形の問題。文系理系問わずぜひとも正解しておいてほしい問題。
・問4は漢詩の形式や修辞法の知識が問われた。特に「押韻」の問題は、昨年度の共通テストでも出題されているのでしっかり押さえておきたい
・問6・7は問題文をきちんと理解できていれば迷わず正解できるだろう。選択肢を丁寧に吟味して素直に正解を選べばよい。

今回の共通テスト国語の中では、最もオーソドックスな出題。設問数は多いが、漢文を勉強していれば取れる知識事項を問う設問が多かった。この第4問での失点は最小限にとどめたい。


攻略へのアドバイス

最後に、次年度以降の共通テストに向けた攻略ポイントを確認しましょう。国語で求められる力をふまえて、必要となる対策を解説します。

正確な知識と幅広い文章ジャンルでの演習経験が差をつくる

問題文や関連する資料に広く目配りして情報を適切に把握する力が重視されており、試験時間に対する負担が重いため、本番でどのような文章が出題されても対応できるように、早い時期から問題演習を重ねて多くの問題に触れておくことが重要。古文単語や漢文句形などの知識事項は、今後も何らかの形で出題されることが予想され、問題文読解の基礎ともなるので、早い時期に固めておきたい。